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鈴木惟司先生(3)

 我々が,行動生態学,進化生態学,社会生物学の先端にいつも触れられていたのは,当時の動物生態学研究室の教員,学生が新しい論文や本をよく読んでいたからです.鈴木先生はとくに勉強家で,周りの言説に惑わされることなく,新しい生態学の概念をいつも独学で身に付けていました.聞きかじった曖昧な情報を話すと,的確な指摘とともにさらに新しい情報を教えてくれました.
 動物生態学研究室では,伝統的に,教員も学生も独立した研究者として認めあい,各自が自分の動物を材料にして自由に研究を行っていました.もちろん,研究方法の妥当性,グラフの描き方,統計処理の方法,英文添削などについて学生は教員から教えてもらうことが多いのですが,論文は各自の単独名で出版していました.教員も,独立した研究者というのはすべてを自分でこなして行うものだと考えていて,大学の運営や教育にどんなに忙しくても,着々と自身の研究をこなしていました.アシナガバチ類に関する鈴木先生の論文の1部を前回のブログで紹介しましたが,いずれも先生の単独名の論文となっています.野外調査,飼育実験,データの解析,論文作成のすべてを自分で行っていたからです.動物生態学研究室では,今でも,研究者をめざす学生の独立性は尊重されています.
 鈴木先生は,もちろん,学生や他の研究者との共同研究も行ってきました.サワガニの体色変異に関する研究はその1つです.サワガニは,多くの地域で褐色ですが,日本全体で見ると,青白い個体の集団があちらこちらで見つかります(下の写真).そのため,褐色の集団と青白い集団が川に沿って隣接する地域が存在します.どうしてそうした境界域が存在し,維持されているのでしょうか.その研究成果はいくつか出版されましたが(例えば,Aotsuka, T., Suzuki, T., Moriya, T. and Inaba, A. (1995) Genetic differentiation in Japanese freshwater crab, Geothelphusa dehaani (White): isozyme variation among natural populations in Kanagawa Prefecture and Tokyo. Zoological Science, 12 (4): 427-434),鈴木先生と一緒に研究されていた青塚先生も亡くなられたことによって,未完のままになってしまいました.(つづく)
サワガニ褐色型
サワガニ青白型

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