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便乗するカニムシ

 カニムシという変わった形の節足動物がいます.だいたい 5 mm ほどの大きさなのですが,サソリに似ていて格好良い動物の一つです.昆虫ではなく,翅はありません.いくつかの種では,他の動物に便乗して移動することが知られています.先週,東京都西部で,ヒメバチの1種のメスに便乗しているトゲヤドリカニムシ(あるいはその仲間)を見つけた学生が写真を撮ってきてくれました(下の写真).体長 15 mm ほどのヒメバチの1種の脚に2頭もこのカニムシが付いていてもぞもぞ動いていたというのです.よく見ると,どちらもハサミでヒメバチの脚をはさんでしがみついています.定員オーバーで不時着といったところでしょうか.
ヒメバチ類の1種に便乗していたトゲヤドリカニムシ
トゲヤドリカニムシ
便乗するトゲヤドリカニムシ
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鈴木惟司先生(5)

 鈴木先生は,鳥の行動や生態にとても興味をもっていました.山歩きをしているとマムシグサの仲間(テンナンショウ属)が赤っぽい実をたくさん付けているのをよく見かけます(下の写真はその花と実).しかし,これらの実を鳥が食べているのを見ることはほぼありません.そこで当時の大学院生と共同で,実がなっているマムシグサの仲間のカメラトラップによる野外調査を行いました.その結果,やはりヒヨドリなどの鳥が赤くなった実を食べることがわかりました.糞として種子が分散されるので鳥散布と言えます.一方,アカネズミが登って来て実を食べることも多いことがわかりました.彼らは種子の中身も食べてしまうのでマムシグサの仲間にとっては捕食者です.マムシグサの仲間には少し早め(夏)に結実する種と秋になってから結実する種があります.それぞれにカメラトラップを仕掛けて実の分散者と捕食者の比較も行っています.これらの論文は大学を退職されてからデータを補完し,執筆しました.共同研究者であった学生が病気で亡くなる前に出版することができて先生も本当に良かった思ったことでしょう.
 Suzuki, T. and Maeda, N. (2014) Frugivores of poisonous herbaceous plants Arisaema spp. (Araceae) in the Southern Kanto District, Central Japan. Journal of the Yamashina Institute for Ornithology, 45: 77-91.
 Suzuki, T. and Maeda, N. (2014) Frugivores foraging on a Japanese species of the Jack-in-the-Pulpit, Arisaema angustatum (Araceae), with reference to the general framework of the links between Arisaema and its major frugivore groups in Japan. Biogeography, 16: 79-85.
 鈴木先生は18歳(大学入学)から64歳(大学定年退職)まで,人生の大半を東京都立大学とともに過ごしました.生態学のことをよく勉強し,野外調査や室内実験に明け暮れ,成果を国際誌に論文として発表し,授業・実習・学生の研究指導などの教育活動に熱心に取り組まれてきました.自由な雰囲気と深い議論を信条とし,実り多い人生であったと思います.願わくば,もう少しでも長く自然とかかわることができたならと思わずにはいられません.長い間,動物生態学研究室を支えていただき,本当にありがとうございました.

マムシグサの仲間の花
マムシグサの仲間の実

鈴木惟司先生(4)

 東京都立大学(=首都大学東京)は,東京都である小笠原諸島に研究施設をもち,小笠原の生き物の研究を進めています.鈴木先生も当初から小笠原の自然の解明に力を注いで来ました.もともと,鳥の行動や生態に強く惹かれていた鈴木先生は,小笠原に固有のメグロやオガサワラノスリといった鳥類,さらに小笠原固有のオガサワラトカゲや小笠原に人為的に持ち込まれたグリーンアノールの野外調査を精力的に行っていました.忍耐強い野外調査は鈴木先生の持ち味の1つで,暗いうちから日が暮れるまで,野外でメグロを丹念に追跡することによって,まだ暗い時にメグロがさえずることなどを見つけたりしています.小笠原の生き物の集団遺伝学的解析などについても共同研究として主導的な役割を果たされました.これらの成果は,例えば,以下のような論文として出版されています.写真はオガサワラの固有種であるメグロとオガサワラトカゲです.(つづく)
<メグロ>
 Kawakami, K., Harada, S., Suzuki, T. and Higuchi, H. (2008) Genetic and morphological differences among populations of the Bonin Islands White-eye in Japan. Zoological Science, 25 (9): 882-887.
<オガサワラノスリ>
 Suzuki, T. and Kato, Y. (2000) Abundance of the Ogasawara Buzzard on Chichijima, the Pacific Ocean. Journal of Raptor Research, 34 (3): 241-243.
 Chiba, Y. and Suzuki, T. (2011) Breeding biology of the Ogasawara Buzzard endemic to the Ogasawara (Bonin) Islands. Ornithological Science, 10 (2): 119-129.
<オガサワラトカゲ>
 Hayashi, F., Shima, A., Horikoshi, K., Kawakami, K., Segawa, R. D., Aotsuka, T. and Suzuki, T. (2009) Limited overwater dispersal and genetic differentiation of the snake-eyed skink (Cryptoblepharus nigropunctatus) in the oceanic Ogasawara Islands, Japan. Zoological Science, 26 (8): 543-549.
<グリーンアノール>
 Hayashi, F., Shima, A. and Suzuki, T. (2009) Origin and genetic diversity of the lizard populations, Anolis carolinensis, introduced to the Ogasawara Islands, Japan. Biogeography, 11: 119-124.

メグロ
オガサワラトカゲ

鈴木惟司先生(3)

 我々が,行動生態学,進化生態学,社会生物学の先端にいつも触れられていたのは,当時の動物生態学研究室の教員,学生が新しい論文や本をよく読んでいたからです.鈴木先生はとくに勉強家で,周りの言説に惑わされることなく,新しい生態学の概念をいつも独学で身に付けていました.聞きかじった曖昧な情報を話すと,的確な指摘とともにさらに新しい情報を教えてくれました.
 動物生態学研究室では,伝統的に,教員も学生も独立した研究者として認めあい,各自が自分の動物を材料にして自由に研究を行っていました.もちろん,研究方法の妥当性,グラフの描き方,統計処理の方法,英文添削などについて学生は教員から教えてもらうことが多いのですが,論文は各自の単独名で出版していました.教員も,独立した研究者というのはすべてを自分でこなして行うものだと考えていて,大学の運営や教育にどんなに忙しくても,着々と自身の研究をこなしていました.アシナガバチ類に関する鈴木先生の論文の1部を前回のブログで紹介しましたが,いずれも先生の単独名の論文となっています.野外調査,飼育実験,データの解析,論文作成のすべてを自分で行っていたからです.動物生態学研究室では,今でも,研究者をめざす学生の独立性は尊重されています.
 鈴木先生は,もちろん,学生や他の研究者との共同研究も行ってきました.サワガニの体色変異に関する研究はその1つです.サワガニは,多くの地域で褐色ですが,日本全体で見ると,青白い個体の集団があちらこちらで見つかります(下の写真).そのため,褐色の集団と青白い集団が川に沿って隣接する地域が存在します.どうしてそうした境界域が存在し,維持されているのでしょうか.その研究成果はいくつか出版されましたが(例えば,Aotsuka, T., Suzuki, T., Moriya, T. and Inaba, A. (1995) Genetic differentiation in Japanese freshwater crab, Geothelphusa dehaani (White): isozyme variation among natural populations in Kanagawa Prefecture and Tokyo. Zoological Science, 12 (4): 427-434),鈴木先生と一緒に研究されていた青塚先生も亡くなられたことによって,未完のままになってしまいました.(つづく)
サワガニ褐色型
サワガニ青白型

鈴木惟司先生(2)

 亡くなられた鈴木惟司先生が助手になられた1980年頃から,生態系の生産力や物質循環にかかわる研究とは別に,個体群生態学/集団生物学の理論を基盤として進展した行動生態学(Behavioural Ecology),進化生態学(Evolutionary Ecology),さらに動物の社会性の進化により重点をおく社会生物学(Sociobiology)が世界中に広がって行きました.これら3つの分野はいずれも共通して,個体の適応度の最大化あるいは包括適応度の最大化の下で,採餌行動の最適化,最適生活史戦略,性比の進化,社会性や利他行動の進化などを解き明かして行きました.こうして新しい研究が次々と展開する時代に突入したのです.
 動物生態学研究室では,この動向をいち早く取り込み,本来,個々の野生動物の行動や生活史に興味を持っている教員や学生ばかりであったので,各自がおもしろいように研究を進めて行きました.鈴木先生は,アシナガバチ類に関して,同じ巣の中の個体どうしの相互作用,コロニーの運命,新成虫である雌雄の産出パターン,その性比,新成虫の交尾行動など,地道な野外調査(巣のすべての個体の一生を記録するなど)と飼育実験(毎日手渡しで飼育中の巣に餌をやるなど)に基づいて得られた新知見を論文として発表しています.下記はそのごく一部です.(つづく)

 Suzuki, T. (1985) Mating and laying of female-producing eggs by orphaned workers of a paper wasp, Polistes snelleni (Hymenoptera: Vespidae). Annals of the Entomological Society of America, 78 (6): 736-739.
 Suzuki, T. (1986) Production schedules of males and reproductive females, investment sex ratios, and worker-queen conflict in paper wasps. American Naturalist, 128 (3): 366-378.
 Suzuki, T. (1997) Worker mating in queen-right colonies of a temperate paper wasp. Naturwissenschaften, 84 (7): 304-305.
 Suzuki, T. (1998) Paradox of worker reproduction and worker mating in temperate paper wasps, Polistes chinensis and P. snelleni (Hymenoptera Vespidae). Ethology Ecology & Evolution, 10 (4): 347-359.
 Suzuki, T. (2003) Queen replacement without gerontocracy in the paper wasp Parapolybia indica in temperate Japan. Ethology Ecology & Evolution, 15 (2): 191-196.
 Suzuki, T. (2005) Insemination of workers prior to assuming the position of queens in a temperate paper wasp Polistes snelleni Saussure (Hymenoptera Vespidae). Ethology Ecology & Evolution, 17 (4): 335-339.

鈴木惟司先生(1)

 今年(2018年)の5月7日に,鈴木惟司(すずきただし)先生がガンで亡くなられました.鈴木先生は,東京都立大学 理学部 生物学科(現在の首都大学東京 理学部 生命科学科)に入学され,そのまま大学院に進学し,理学博士の学位を取得された後,1980年4月より動物生態学研究室の助手となられ,准教授を経て 2012年3月に退職されました.今年の3月末にお会いしたばかりで,突然の訃報でした.
 先生が学生の頃は,世界中のいろいろな生態系においてどれくらいの生産量があるのか,生態系の生産性にはどのような共通原理があるのか,生産量に違いをもたらす要因は何か,という研究が押し進められており,東京都立大学動物生態学研究室もその拠点の一つとして,動物の個体のエネルギー収支(物質経済)を明らかにしようと摂食量,同化量,呼吸量,成長量などの測定を行っていました.鈴木先生は,その中でもとくに,動物の家族制に興味をもたれ,育雛中の小鳥やアシナガバチ類の巣(コロニー)がどれくらい餌を取ることができるのか,餌の量と質を変えてやると家族制にどのような変化が起こるのかを,その当時,精力的に調べていました.下の写真は,先生の研究材料の一つであったフタモンアシナガバチとそのコロニー(巣)です.(つづく)

フタモンアシナガバチ
フタモンアシナガバチの巣

もう1つの新種,トサシミズサンショウウオ

 もう1つのサンショウウオ類の新種が,研究室の卒業生と,地元および大分大学の研究者らとの共同研究として,今年の6月に記載されました(この論文).それは,トサシミズサンショウウオ Hynobius tosashimizuensis です(下の写真).このサンショウウオは,これまで,九州東部に生息するオオイタサンショウウオ H. dunni とされてきましたが,遺伝的に見ると,それとは異なる種であると結論され,新種となったわけです.

トサシミズサンショウウオ

新種,ヒガシヒダサンショウウオ

 少し前(6月下旬)ですが,研究室の大学院生と卒業生が,大分大学およびロシアの研究者と共同で,ヒガシヒダサンショウウオ Hynobius fossigenus という新種の記載を行いました(この論文).これまでヒダサンショウウオ H. kimurae と扱われていた集団のうち,東京,埼玉,神奈川,山梨,静岡,愛知のものを別種として区別したものです.写真は上からヒガシヒダサンショウウオ,ヒダサンショウウオの順です(縮尺は異なる).両種はよく似ていますが,ヒガシヒダの方が体が大きく,頭胴長に対して頭部が小さく,胴部,四肢,尾部が長い傾向があります.紀伊半島に分布するオオダイガハラサンショウウオ H. boulengeri もヒダサンショウウオにごく近縁の種です.
ヒガシヒダサンショウウオ
ヒダサンショウウオ

奄美大島へ(4)

 西表島と言えばイリオモテヤマネコ,沖縄島(沖縄本島)と言えばヤンバルクイナ,それでは奄美大島と言えば,..いろいろな生物の名前が出てくると思いますが,まずは,アマミノクロウサギでしょうか.山間の道路では,注意喚起の標識が立っています.今回の奄美行きでは,夜の林道を走っていて,アマミノクロウサギに出会うことができたそうです.一瞬の出会いであったので写りが悪いのですが,確かにアマミノクロウサギですね.
飛び出し注意
アマミノクロウサギ

奄美大島へ(3)

 奄美大島には,水辺の生き物以外にも貴重な動物が多く生息しています.危険な動物ですが,ハブも奄美・沖縄にしかいません(ヒメハブも奄美に生息しますが今回は見られなくて残念).アカマタは無毒のヘビですが,これも貴重な動物の一つです.(つづく)
ハブ
アカマタ
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Author:首都大動物生態
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