FC2ブログ

中国へ(6)

 前日とは少し離れた場所に調査に出かけました.ここでは,空飛ぶゴキブリがたくさんいました.昼間なのに,林冠の開けた場所を,羽ばたいては滑空するように飛び回っています.高い所を飛んでいるのでなかなか手が届きません.最初,昼行性の黒っぽい蛾だと思ったのですが,これが何とゴキブリの1種でした(下の写真).オレンジ色の腹部,黒い前翅,少し透けた後翅,飛んでいる様子は本当に蛾にそっくりでした.所変われば,いろいろな習性の昆虫がいるものですね.これで調査は終了.2日間かけて日本に帰って来ました.現地では多くの研究者と学生にお世話になりました.多謝.
空飛ぶゴキブリ

スポンサーサイト

中国へ(5)

 2つ目の調査地では,山頂近く(1000 m以上)に良い森が残されていました.そこを流れる川の水は褐色です.木の葉に含まれるタンニンなどが水に溶け出すとこのような色になります.熱帯の渓流ではよく見られる現象です.この川には水生昆虫がたくさん棲んでいました.しかし,観光地になりつつあり,駐車場が整備され,サル(タイワンザル?)の餌付けも行われていました.巨大なヤスデなどが棲むこの森が,今後とも荒らされないことを祈るばかりです.
中国南部の森
コーヒー色の渓流
中国南部の大きなヤスデ

中国へ(4)

 中国へ来て6日目,今日は次の調査地に向けて大移動.ひたすら車を走らせます.高速道路は最短コース(まっすぐな道)で整備されており,かつ交通量は極めて少ないので,ドライブは快適です(町に入らない限り).このあたりは石灰岩地帯で,まるで水墨画のような風景が延々と続きます.残念なのは,自然の森がまったくなく,植林か伐採地,あるいは畑(とくにトウモロコシ)ばかりになってしまっていることです.

中国の高速道路

中国へ(3)

 いよいよ野外調査.中国南部へ移動.そこでお世話になる研究者からまたしてもアルコール分50%のお酒を飲みながら親睦を深めました.一つ目の調査地はベトナム最北部とよく似た環境です.石灰岩地帯なので,乾期のこの時期には枯れ沢が目立ちます.こうした河川では,雨が降って水が流れるようになったとしても水生生物が全くいない状況が続きます.逆に,この時期に水が流れていると,そこは1年中水が枯れないため,たくさんの水生生物が棲息しています.この地域は,また,民族衣装など文化的にもベトナム最北部と似ています.ここでしばらく滞在して調査を行いました.下の写真は,昼間に餌を食べていた大きなザトウムシの1種です.黄白色の4つのスポットが目立ちます.

中国のお酒2
朝市
中国のザトウムシの1種

中国へ(2)

 16日には,昆虫の系統進化に関する1日がかりの国際ミニシンポジウムが開催されました.比較形態学,分子系統学,古生物学から昆虫の系統を見直そうというものです.イギリス,オーストリア,アメリカ,オーストラリア,日本,中国の研究者らが参加しました.中国からは多量の昆虫化石(とても状態の良い)が出ます.それらの詳細な形態比較から,当時の彼らの行動や生態を推定した研究が多く発表され,圧巻でした.最後は,やはり50%のアルコールを含む古酒で親交を深めました.

中国の昆虫化石
中国の古酒

中国へ(1)

 5月15日から24日まで,中国で野外調査を行いました.まず北京に滞在.アルコール分が50%ほどのお酒を少しずつ飲みながら,本場中国料理を満喫しました.
中国の酒1

ヒゲナガカワトビケラ(6)

 どこで見たのか忘れてしまいましたが,細胞は,高温で培養すると,低温で培養するより小さくなるそうです.高温で細胞一つ一つが小さくなると全体(成虫)の大きさも小さくなります.そこで,高い温度で飼育して得られた小さい成虫と低い温度で飼育して得られた大きい成虫で,本当に1個1個の細胞の大きさが変化しているのか調べることが流行りました.しかし,細胞数は成虫になったときにいつも一定であるはずがありません.細胞の大きさだけでなく,細胞数も変化して成虫の大きさは変わり,細胞の大きさに関しては温度の影響が必ずしも予測通りではありませんでした.一方,卵や精子は1個の細胞です.ヒゲナガカワトビケラでの観察では,低温下では卵も精子も大きくなり,高温下では卵も精子も小さくなりました.つまり,少なくとも生殖細胞は温度によってその大きさが変化する可能性があります.低温で大きくなり,高温で小さくなるという現象が,もし生理的な現象として避けられないとすると,卵サイズや精子サイズの適応的意義を考えるときには注意が必要ですね(例えば,秋が深まるにつれて卵サイズが大きくなり,そこから孵化した少し大きい1令幼虫は,冬に向けてさらに固くなった植物の葉に食いつき易くなるなど).下の写真は台湾に生息するナカハグロトンボ Euphaea formosana(オス)です.これは前回のコナカハグロトンボより大型の種です.ヤゴが育つ水温によって季節的に成虫の大きさが変化しますが,コナカハグロトンボよりいつも大型です.
ナカハグロトンボのオス

ヒゲナガカワトビケラ(5)

 冬以外はだらだらと成虫が出現し続ける昆虫では,「低温で育つと大型化し,高温で育つと小型化する」という現象がよく知られています(この論文など).石垣島・西表島の固有種であるコナカハグロトンボ Euphaea yayeyamana(下の写真,オス)でも,北海道のヒゲナガカワトビケラと同じように成虫の大きさが春から秋にかけて徐々に小型化していきます.どうして温度によって大きくなったり,小さくなったりするのでしょうか.化学反応は温度によって影響を受けるはずです.発生(脱皮,変態など)に関わる化学反応系と成長(摂食,消化,吸収,同化など)に関わる化学反応系で,温度の効果(とくにQ10)にずれがあれば最終的な体の大きさに差が出そうです.一般に低温下でもゆっくりですが餌を食べて体を大きくさせることはできますが,発生(脱皮,変態)は停止したままです.一方,成長に対する温度の影響よりも発生に対する温度の影響が大きいとすると,温度が高いほど発生(脱皮,変態)がより速く進むため,小さいまま成虫になってしまいそうです.しかし,実証的研究は進んでいません.今の季節,蚊が大きく感じるのは錯覚ではありませんよ(ただし同種での比較).
コナカハグロトンボのオス

ヒゲナガカワトビケラ(4)

 昆虫では,一般に,高い温度で発育すると小さい成虫が羽化し,低い温度で発育すると大きい成虫が羽化します.もちろん,季節適応(化性,羽化のタイミング,休眠など)を起こしている場合や,生活史形質が日長や温度によってコントロールされている場合にはそうならないことがあります.ヒゲナガカワトビケラは,冬期以外にはいつも成虫が見られます.東京(南浅川)では卵から成虫の羽化まで数ヶ月です(水温が高いと幼虫期間が短く,水温が低いと幼虫期間は長くなります).4月に羽化する個体は,前年の秋に産み落とされた卵から発育したものです.幼虫期間をほぼ冬の低温下で過ごしています(だから大きな成虫となる).夏から秋にかけて羽化する個体は,春に産卵されてその後の高水温下で発育した個体です(だから小さな成虫となる).一方,北海道(千歳)では,川の水温が東京よりも格段に低いため,幼虫期間はおよそ1年です.6月に羽化する個体は,幼虫期間の後半(成長の著しい期間)を冬から春にかけての低温下で過ごしています(大型化).一方,9月に羽化する個体は,幼虫期間の後半を春から夏の高水温下で過ごしています(小型化).こうして,成虫の大きさに季節変化や場所毎の違い(より低温の北海道の方が大きい)が見られるのではないかと考えられます.温度を変えて飼育をすれば証明できるのですが,ヒゲナガカワトビケラを1令幼虫から羽化するまで飼うのは容易ではありません.
ヒゲナガカワトビケラ成虫展翅標本オス

ヒゲナガカワトビケラ(3)

 ヒゲナガカワトビケラは北海道にも生息しています.そこで,北海道千歳でも共同研究者と一緒に,1年を通して成虫を捕まえ,雌雄の前翅長(A: オス.B: メス),成熟卵の体積(C),成熟精子の長さ(D)を測定しました.北海道では6月から9月まで成虫が出現します.初夏に出現した成虫は大きく,卵も精子も大きいのですが,夏,秋と成虫の出現が遅くなるにつれて,成虫は小型化し,卵も精子も小さくなる傾向がありました.これを見てどう思いますか.ヒゲナガカワトビケラのこの季節変化について,前回に紹介した東京(南浅川)での結果と同じ理由で説明できそうですか.
ヒゲナガカワトビケラの大きさ(北海道)

ヒゲナガカワトビケラ(2)

 かつて,南浅川を通りかかるたびにヒゲナガカワトビケラを捕まえ,研究室で雌雄を判定して,前翅長を測定し,解剖をして成熟卵の体積,成熟精子の長さを1年間にわたって測定したことがあります.その結果は,1999年に「 Seasonal changes in body size, egg size and sperm length of Japanese Stenopsyche (Trichoptera: Stenopsychidae)」と題して,Proceedings of the 9th International Symposium on Trichoptera 1998, Chiang Mai, pp. 125-132 に掲載されました.ヒゲナガカワトビケラは4月から11月まで成虫が出現します.夏に成虫がとても少なくなりますが,下のグラフにあるように,成虫の体の大きさも(A: オスの前翅長.B: メスの前翅長),卵サイズ(C: 卵体積)も,精子サイズ(D: 精子長)も春から夏にかけて徐々に小さくなり,秋から初冬にかけてまた少し大きくなる傾向が認められました(横軸は1年間365日を示す).どうしてこのような季節変化が生じるのでしょうか.
ヒゲナガカワトビケラの大きさの変化

ヒゲナガカワトビケラ(1)

 南浅川では,ずいぶん前(何年も前)に大洪水となり,河床の形態が大きく変わってしまいました.以前は瀬の多い川でしたが,洪水後は淵ばかりで水量のずいぶん少ない川になってしまいました.そこで,先日紹介したように,淵に生息するモンカゲロウが多数発生するようになったのです.洪水前には,同じ場所で多数のヒゲナガカワトビケラの成虫が乱舞していました.昨日,久しぶりに一匹のヒゲナガカワトビケラの成虫(触角が長いのでオス)が街灯の下に止まっているのを見つけました.このトビケラの幼虫は,石ころのごろごろした瀬に網の巣を張って暮らしています.

ヒゲナガカワトビケラの成虫(オス)

いつの間にか春も過ぎて

 5日は,東京都と埼玉県の県境に野外調査の手伝いに出かけました.気温も高く,いつの間にか春も過ぎて,初夏の昆虫たちが登場していました.下の写真は コジャノメ と ヤマトシリアゲ(メス)です.

コジャノメ
ヤマトシリアゲ(メス)

モンカゲロウの一斉羽化

 4月30日と5月1日の夕刻(午後6時以降)に,南浅川(高尾駅前付近)で,モンカゲロウが例年になく大発生して群飛していました.川縁で,上に舞い上がったかと思うと,すっと落下し,また上に舞い上がるという swarm と呼ばれる行動です.これは配偶行動と関係していて,ほとんどがオスの成虫です.この中にメスの成虫が入り込んで交尾対が形成されます(交尾時間は短い).オスの成虫はメスと比べて前脚が長く,複眼が大きいのですぐに区別できます.成虫は寿命が短いため(数日以内),雌雄が出会うために一斉に羽化するという説と,天敵に襲われたときに自身の生存率をあげるために群れを作る方が有利なので一斉に羽化するという説があります.確かに,みんなと別の日に羽化してしまう個体は配偶相手に出会えないでしょうし,鳥やトンボにあっという間に捕食されかねませんね.一斉羽化の適応的意義としてはいったいどちらがより重要なのでしょうか.
モンカゲロウ
プロフィール

首都大動物生態

Author:首都大動物生態
研究室の日常の紹介
研究室HP
研究室HP in English

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR