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ホタルガ

 6月中旬ころからよく見かけるガの一つに ホタルガ があげられます(下の写真).マダラガ科の1種で,強烈なにおいをもついわゆる毒蛾の1種です.昼間にくるくる舞うように翔び,黒地に白の帯模様がよく目立ちます(いわゆる警告色).普通に見られるので,これをモデルとした擬態系(とくにベイツ式擬態)があってもよさそうなものですが,すぐには思い浮かびませんね.ヨツメトビケラは同じ時期によく似た翔び方をしますがどうでしょうか(もっともヨツメトビケラには翅に色彩多型があるのですが).今は北米にしかいないのですが,明らかにアジア起源の昆虫に,このホタルガにそっくりの仲間がいます.過去の擬態が新天地でもまだ引き継がれている可能性を証明するにはどうしたら良いでしょうか.
ホタルガ
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論文賞受賞

 日本昆虫学会は,英文誌である「Entomological Science」 という国際誌と,和文誌である「昆蟲ニューシリーズ」を発行しています.これらに掲載された論文から毎年2編が論文賞として選ばれます.今年度(2014年に出版された論文の中から),動物生態学研究室で行われた研究成果である Cantharidin world in nature: a concealed arthropod assemblage with interactions via the terpenoid cantharidin. Entomological Science, 17(4): 388-395 がその論文賞を受賞しました.この論文の内容についてはこのブログでも「カンタリジン世界」として紹介しました.カンタリジンという化学物質を介した生物の相互作用が自然界には存在します.興味のある方はそれらのブログを見て下さい(これこれこれこれこれ).下の写真は,ホソアシチビイッカクという小型の甲虫類の1種です.これもカンタリジン世界の住人です.体長1〜2 mm と小さいですがちょっと良い格好ですね.前胸から頭の上に突出した角の機能についてもすでに調べてあります(これ).

ホソアシチビイッカク

貝殻を持ったウミウシ

 5月に撮影されたウミウシ類の写真が沖縄から届きました.沖縄では,5月はウミウシ類を見るのに最も良い季節だそうです.下の写真は,貝殻を背負ったウミウシ類であるコンシボリガイとベニシボリガイです.どちらも体長2 cm.小さなウミウシの仲間です.紺絞り貝,紅絞り貝というのかどうかわかりませんが,確かに上のウミウシには紺色の絞り模様が,下のウミウシには紅色の絞り模様が,貝殻の表面についていますね.

貝殻付ウミウシ

続:CFCの本

 出版されたばかりのCFCの本の中で,日本人の研究成果がごくわずかしか引用されていないことを昨日紹介しました.しかし,唯一,第10章「間接的CFCとハサミムシ類における事例」は日本の研究者によって執筆されたものです.その内容は,彼がここ(首都大学東京の動物生態学研究室)の大学院生であったときに行った研究成果に基づいています.大学院を出てからも研究をさらに発展させ,多数の論文を出しています.この10章を含め,彼の研究成果はこの本の主軸の一つになっており,研究を進展させるとはどういうことか,良い手本になると思います.大学の研究室であるからには,学生も教員も,こうした発展的な研究を目指したいものです.下の写真は,マレー半島産クギヌキハサミムシ科の1種のオスです(おしりのハサミが格好良い).

クギヌキハサミムシ科の1種のオス

CFCの本

 CFCの本がSpringer社から出版されました(英語の本).これでは何のことかよくわからないと思います.CFCとはCryptic Female Choiceの略です.日本語ではなかなか適訳がないのですが,精子がメスに渡されてから受精に至るまでの過程でのメスの配偶者(精子)選択のことです.この過程での配偶者選択は,交尾に至るまでの配偶者(オス)選択(その配偶行動はよく目立つ)とは違って,メスの体内で目立たずに行われるのでこのように呼ばれます.出版された本は,Peretti, A. V. and Aisenberg, A. (editors) 2015 Cryptic Female Choice in Arthropods. Patterns, Mechanisms and Prospects. 509 pp., Springer です.多くの研究者が執筆しており,全部で以下の18章からなります(簡略訳).
1.CFCと他の交尾後性選択
2.ゴケグモ属におけるCFC
3.コガネグモ属におけるCFC
4.シロカネグモ属における交尾後性選択
5.ユウレイグモ科およびタマゴグモ科における性選択
6.クモ類における婚姻贈呈とCFC
7.ザトウムシ類における雌雄の配偶者選択
8.甲殻類におけるCFC
9.トンボ類のメスの配偶者選択
10.間接的CFCとハサミムシ類における事例
11.コオロギ・キリギリス類におけるCFC
12.鱗翅目の雌性内部生殖器内での性選択
13.双翅目における精液とCFC
14.ミズアブ類のCFCと精子競争
15.ツエツエバエ類の交尾器形態とCFC
16.コクヌストモドキ類の多数回交尾とCFC
17.社会性昆虫のメスによる配偶者選択
18.雌雄間でのギブアンドテイクとコミュニケイションとしての交尾
CFCについては,他大学の研究者はもちろん,動物生態学研究室でも興味を持って取り組んでいます.しかし,日本人の研究成果で引用されているものはごくわずかでした.(つづく)
CFCの本

オオシロカゲロウ単為生殖集団の起源

 日本にはオオシロカゲロウという蜉蝣目の昆虫が生息しています.このカゲロウには,オスとメスの両方がいる集団(有性生殖集団)と,メスのみの集団(単為生殖集団)があります.両集団は,本州から九州にかけてモザイク状に分布しています.以前に,日本および朝鮮半島に分布するオオシロカゲロウと,関東平野にのみ分布するこれに近縁のアカツキシロカゲロウについて,分子系統解析を行った結果を紹介しました(このブログ).今回,オオシロカゲロウの単為生殖集団の起源について分子系統地理学的に明らかにした論文が出版されました(この論文).両集団はモザイク状に分布しているにもかかわらず,単為生殖集団の起源はわずか1回でした.西日本に生息する有性集団のなかに,最近になって単為生殖を行う個体が出現し,それが本州から九州に広がっていったと推測されました.単為生殖集団はメスのみからなり,オスと交尾することなく産卵して増えていきます.1匹のメスから新しい集団が形成されること,またその集団の個体数増加に関しても,半数がオスとなる有性生殖団に比べて有利です.単為生殖集団の分布が,今後もどんどん広がっていくのかどうか,とても興味深い問題ですね.

オオシロカゲロウのメス

栃木の山で

 今日(6月8日)は,栃木の山へ行ってきました.渓流沿いに山歩きを楽しみました.セミが鳴いていましたが,これはエゾハルゼミです.やや標高の高いミズナラなどの夏緑樹林に分布しているセミです.よく似た種にハルゼミとヒメハルゼミがいますが,生息環境が違います.渓流には,やはり標高の高い所に生息しているハコネサンショウウオの幼生が多く見られました(日本産ハコネサンショウウオは最近複数種に区別されましたが).下流では川が荒れていましたが,ここまで来ると川も落ち着いていて良い感じでした.

エゾハルゼミ
ハコネサンショウウオの幼生

フィンランドのキタリス

 フィンランドのヘルシンキ近郊では,多くのキタリスが見られたそうです.キタリスはユーラシアに広く分布し,北海道まで分布域が伸びています(北海道のキタリスは北海道固有の亜種として区別されることがあり,亜種名としてエゾリスと呼びます).本州・四国のものはキタリスではなく,ニホンリスという別種になっています.写真のキタリスは冬毛から夏毛へ毛替わり中のようです.それから,カナダガンもよく目につくそうです.野生の個体ですが,これは北アメリカからの移入集団(外来種)です.

キタリス(ヘルシンキ)
カナダガン(ヘルシンキ)

フィンランド

 フィンランドのヘルシンキで開催された国際会議に出席していた共同研究者から写真を見せてもらいました.北緯60度に位置するヘルシンキ近郊の森はかなり一様な針葉樹林です.先日ベトナムから帰って来たばかりですが,その森の多様性との違いに驚くばかりです.生態学の研究をする上で,どちらが有利でしょうか(もちろん一長一短).町並みはゆったりとしていて路面電車が走っています.

ヘルシンキの森
ヘルシンキの町並み

ミヤマカワトンボの精子置換のしくみ

 日本には,日本トンボ学会という組織があり,トンボ類の研究を行う人たちが集まっています.学術雑誌としてTOMBOという専門誌(英語論文と日本語論文が掲載される)を編集して発行しています.その編集幹事会から依頼されて書いた総説「ミヤマカワトンボにおける精子置換のしくみーそこに性的対立が生じるとどうなるか?ー」が最新号に掲載されました(TOMBO 57: 1-7 (2015)).その総説の内容は,このブログで6回にわたって紹介したものを主に綴ったものです(ここから6回連載).ちなみに,TOMBOという雑誌は今年で57巻を数えます.1年1巻なので,創刊されて57年も経つのですね.下の写真はカワトンボ科のアオハダトンボという種のメスです.

アオハダトンボのメス
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