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武器をもつか,プレゼントを贈るか

 昆虫の世界には,我々が予想するよりはるかに不思議な現象で満ちあふれています.雌雄が出会って交尾をする過程で,オスとメスのかけひきがあります.オスどうしがメスあるいはメスが来る場所をめぐって争いをすることはよく知られています.一方,オスからメスへ婚姻贈呈を行うこともあります.前者の場合には,オスどうしの戦いで勝つために,大きな武器を身にまといます.カブトムシのオスの角やクワガタムシのオスの牙は,そうしたオスどうしの戦いに使う武器として進化したと考えられます.一方,後者では,オスはメスへのプレゼントを用意しなければなりません.プレゼントを自分で作って用意するためには,それを準備する特別の器官が必要です.しかし,オスは万能ではありません.武器となる角や牙を立派に発達させ,なおかつ高価なプレゼントを作って準備するなどとても無理でしょう.こうした制約のことを trade-off と呼びます.昆虫では,幼虫のときに得た資源(栄養やエネルギーなど)を使って成虫の形態ができあがります.そこには,手に入れた資源を成虫のどの形態に投資するかという trade-off の問題が生じます.この資源の trade-off は,昆虫の形態や行動の進化の大きな制約となっているはずです.ヘビトンボ類には,オスが武器を発達させる種(下の写真はキバヘビトンボ属の1種のオス.メスにはこのような長い牙はない)と,オスが高価なプレゼントを贈る種がいます.はたして武器とプレゼントの両方を使うオスは進化し得るのでしょうか.その論文が Proceedings B に掲載されました(ここ).
キバヘビトンボ属の1種のオス
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学術雑誌

 研究を行うと,その成果を学術雑誌に発表します.国際的によく知られた自然科学全般を扱う学術雑誌としては,英国を中心として出版されている「Nature」と,米国を中心として出版されている「Science」があります.また,英国の「Proceedings B」,米国の「PNAS」も自然科学全般を扱う国際的な学術雑誌です.Proceedings B は Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences の略称,PNAS は Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America の略称です.前者には物理学,数学,工学などの論文を掲載する姉妹誌「Proceedings A」というのがありますが,後者はこれ一冊で自然科学全般を掲載しています.多くの生物学者は,自身の研究成果を広く他分野の人にも知ってもらおうと,こうした自然科学全般を扱う国際誌に論文を掲載したいと考えているはずです.一方で,各研究分野や研究材料ごとにも専門の国際的な学術雑誌がたくさんあります.いずれにしても,論文が掲載されて,多くの目にふれ,それが事実として定着していくことが科学の発展といえます.

学術雑誌

那須塩原へ

 19日から20日にかけて那須塩原方面へ野外調査に出かけました.標高の高い所に行ったので,季節はまだ早春でした.山が急峻であるため,荒れた感じが強く,下の写真にあるように,渓流の石はごつごつしています.所々に雪も残っていました.野生のニホンザルが急斜面からこちらを見ていました.
那須

早春の渓流

ニホンザル

OU講座

 今日は午後7時から,都心において,首都大学東京オープンユニバーシティの講座(OU講座)を担当します.高校教育で水生昆虫を材料にしてどのような実験やアクティブラーニングが行えるかを,主に高校教員に紹介することになっています(1コマのみですが).大学では水生昆虫の調査を行うのですが,高校生に対して行うときにはどのような視点や注意が必要でしょうか.実際には野外調査が難しいので,室内で行えるようにかなり工夫が必要ですね.

OU講座

春のシリアゲムシ

 春も本番をむかえ,これから初夏にかけて多くの昆虫の成虫が出現します.東京では,今日は久しぶりの晴れ.学生が里山で春のシリアゲムシ類を採ってきました.下の写真はキシタトゲシリアゲのオスです.メスと違って,オスの腹部の先端は,サソリのように背中側に反り返っています.「尻上げ虫(シリアゲムシ)」の名の由来は,このオスの特徴にあります.

キシタトゲシリアゲオス背面
キシタトゲシリアゲオス腹面

クビワユスリカに近縁の新種

 Nanocladius shigaensis Inoue, Komori, Kobayashi, Kondo, Ueno et Takamura, 2015 という新種のユスリカが,3月16日付けのZootaxaという学術雑誌で記載されているのを見つけました(Zootaxa 3931 (4): 551-567).これはクビワユスリカ Nanocladius asiaticus Hayashi, 1998に非常に近縁の別種です.クビワユスリカについては以前にこのブログで紹介しましたが(1回2回3回4回5回),その幼虫は,ヘビトンボ類の幼虫の体表で暮らしています.しかし,今回新種として記載された N. shigaensis では,幼虫がオオヤマカワゲラ類の体表で暮らしています.同じ川の中にこれら2種が共存しており,便乗する相手が違うのです.これら2種の成虫を区別するのは至難のわざなのですが,ミトコンドリアDNAのCOI領域の塩基配列から,2種は全く別の種であることが示されています.また,幼虫でも簡単に区別できます.頭が黒っぽくて大きいのがクビワユスリカ(写真上),頭が茶色っぽくて小さいのが今回の新種です(写真下).なるほど,誰かがそれに気付いて証明することによって,一歩ずつですが着実に自然のなぞは解明されていくものなのですね.
クビワユスリカ類2種の幼虫

Anachauliodes属のヘビトンボ

 日本人なら,トンボを知らない人はいないはずです.しかし,ヘビトンボがトンボでないことを知っている人はおそらくごくわずかだと思います.トンボは不完全変態の昆虫で,幼虫(ヤゴ)の背中が割れてトンボ(成虫)になります.ヘビトンボは完全変態の昆虫で,幼虫は蛹となって,蛹から成虫が羽化します.今日紹介するのは,ヘビトンボの仲間(広翅目)のAnachauliodes属です.中国南部,東南アジア北部,インド北東部の限られた地域にのみ分布しています.この属にはいくつか種が記載されていたのですが,分子系統解析の結果,1属1種であることがわかりました(Yue, L., Liu, X., Hayashi, F., Wang, M. and Yang, D. 2015. Molecular systematics of the fishfly genus Anachauliodes Kimmins, 1954 (Megaloptera: Corydalidae: Chauliodinae). Zootaxa 3941 (1): 091-103.).
Anachauliodes属

ベトナム・ラオスのトンボの新種

 主に東南アジアに分布するDevadatta属という中型のトンボの仲間がいます.渓流に生息するため,開発によって生息地がどんどん狭められています.D. ducatrixという種(写真:上がオス,下がメス)に,ごく近縁の別種が2種いることを見つけ,それぞれを新種として記載しました.その論文が出版されました(Phan, Q. T., Sasamoto, A. and Hayashi, F. 2015. Description of two new species of the genus Devadatta from northern Vietnam and central Laos (Odonata: Devadattaidae). Zootaxa 3941 (3): 414-420).一つはベトナム北部に,もう一つはラオス中央部に生息します.
Devadatta ducatrixオス
Devadatta ducatrixメス

イタヤガイ

 昔は貝殻拾い,今ではもう少し広い意味で,ビーチコーミングと呼ばれていますが,海岸で貝殻などいろいろな物を探すのは楽しいことです.3月に房総の海岸で拾ってきたというイタヤガイを見せてもらいました.背側と腹側の貝殻の形や色がまったく違っていて,それを知っていなければ,とても同一個体のものとは思えません.背側の殻の色がピンク色のものを見つけると,ちょっと得をした気分になれますね.

イタヤガイ

カラフルな春のウミウシ

 実家の引っ越しという大作業で毎日が怒濤のごとく過ぎ去り,気がつけば新年度,桜の花も散り始めました.この間に届いた情報や出来事をしばらく紹介していきます.まずは沖縄の海から届いた春(3月)に見られるウミウシの写真です.上から順番に,チリメンウミウシ,コールマンウミウシ,ヒメコモンウミウシ,ムラサキウミコチョウという種です.春らしい感じでほっと一息つけますね.
チリメンウミウシ
コールマンウミウシ
ヒメコモンウミウシ
ムラサキウミコチョウ
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首都大動物生態

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