FC2ブログ

オニグルミの実の食べ方(7)

 オニグルミの木が自生していないにもかかわらず,神津島に棲むアカネズミはその実をよく食べました.他の伊豆諸島のアカネズミはそんなには食べられません.ここで,関東地方と伊豆諸島のアカネズミの分子系統樹を作成してみると,意外な事実が明らかになりました(この論文).伊豆諸島のアカネズミは,関東本土のアカネズミとは遺伝的にかなり異なる島独自の集団を形成していました.ところが,神津島の集団だけは関東本土のものと同じなのです.つまり,神津島のアカネズミは比較的最近になって本土から移住してできあがった集団なのです.だからオニグルミの実を本土のアカネズミと同じようによく食べるのも納得できます(一般的には,ある遺伝的形質に対して,選択が作用していないと,その形質は強く維持されないという考えのもと).これまで連載してきたように,アカネズミによるオニグルミの実の食べ方に関しては,こうして個体差や地域差があることが次第に明らかになってきました.これに続く話はまた別の機会に紹介することにしましょう.

オニグルミを食べるアカネズミ
スポンサーサイト



オニグルミの実の食べ方(6)

 オニグルミの実は,貯食することもできるため,アカネズミにとっては貴重な餌の一つです.関東地方の本土で暮らすアカネズミにとって,多かれ少なかれ,オニグルミの実を利用できる機会があります.しかし,オニグルミの木が自生していない伊豆諸島では,そこに棲むアカネズミにとって,この実を食べる機会はずっとなかったことになります.アカネズミは伊豆大島,新島,式根島,神津島,三宅島に生息しています.小さい利島,それから三宅島よりも南に位置する御蔵島,八丈島,青ヶ島には生息していません.そこで,伊豆諸島のアカネズミがオニグルミの実を食べられるかどうか調べてみると,ほとんどの個体が食べられませんでした.餌だと思って削り始めてもうまく穴があけられません.ところが,神津島のアカネズミだけは,関東地方のアカネズミたちとまったく同じようにクルミを上手に食べました.これはいったいどうしたことなのでしょうか.
伊豆諸島

オニグルミの実の食べ方(5)

 オニグルミの実の半分を食べるのに,アカネズミは2時間もかかって堅い殻を削らなければなりません.稜線の中央部に穴をあけると,小さい穴で中身を完食できます(上手な食べ方).しかし,他の場所から削る始めると,大きな穴をあけても中身を完食するのは大変です(下手な食べ方).オニグルミの木の近くに定住するメスは,育児中にも巣穴に持ち込んだクルミの実を食べることがあるでしょう.子ネズミたちはそれによってクルミの実の食べ方を経験(学習)する可能性があります.そうして巣立ったアカネズミはすでにクルミの食べ方を経験しているので,すぐに上手に食べられるでしょう.一方,オニグルミの木がない場所に定住したメスの子ではそうした経験が期待できません.巣立ち後,クルミの実を上手に食べるのはなかなか困難かも知れません.オスは子育てに参加することはないので,オニグルミの木のある地域では,こうして母親から子へ,その子のうち娘はまたその子へと,クルミを上手に食べる技術はメス経由で伝搬していきそうです.それを飼育下で再現してみようと考え,上手にクルミが食べられる母親に対して,育児中にクルミを与えなかった場合(A)と与えた場合(B)で,巣立ち後の子ネズミの行動を比較しました.その結果,後者では最初から上手にクルミを食べられる個体の割合が高くなっていました(この論文).森の中で暮らすアカネズミにも,母親から娘に伝えられていく文化がありそうです.
アカ実験

オニグルミの実の食べ方(4)

 昨日紹介したオニグルミの実の食痕は,アカネズミ(下の写真)によるものです.アカネズミは,クルミを押さえ込んで削り続けます.2時間くらい削り続けることもよくあります.そうして穴をあけて中身を食べます.どこを削っても良いというわけではなく,小さい穴で中身を食べ尽くすことのできる最も効率の良い部位があるのです.それは縫合線の中心部で,そこから削ると,中にある隔壁に邪魔されずにうまく中身を食べることができます.昨日の食痕をよく見て下さい.確かに縫合線の中心部に穴をあけていますね.この上手な食べ方は,経験を積むことによって獲得されることがわかりました(この論文).
アカネズミ

オニグルミの実の食べ方(3)

 ニホンリスによるオニグルミの実の食べ方を紹介しましたが,森の中を歩いていると,下の写真にあるような食痕がよく見つかります.これらはニホンリスとはまた別の食べ方をしていますね.縫合線の部分を削るのではなく,殻の表面を根気よく削って穴をあけたようです.いったい誰の仕業でしょうか.

アカネズミ食痕

オニグルミの実の食べ方(2)

 昨日紹介したオニグルミの実の食痕は,ニホンリスによるものです.オニグルミは秋に房状に青い実をつけます.この中にいわゆる胡桃(クルミ)が入っているのですが,外側の青い部分は徐々に変成していき,地面に落下後,黒くなってきます.そうすると中の胡桃が顔をのぞかせます.リスは両手で胡桃を持って,殻がちょうど2つに合わさっている部分を歯で削ります.そこに穴があくと歯を差し込んで,てこの原理を利用して2つに割るのです.だから,胡桃の殻の周囲の一部には必ず削り痕があります.この削り痕が少ないほど,割り方の上手な個体と言えます.上手に割れない個体もいます.そこには学習が関係しています(この論文).

オニグルミ実

オニグルミの実の食べ方(1)

 クルミ割り人形というのは,クルミの中身を取り出すために堅い殻をうまく割るための装置に,人形の装飾を施したものです.人でさえ,クルミを割ることは容易ではありません.手の力だけでは無理,歯でかじっても無理,石でたたくと粉々に飛び散って食べにくいという代物です.ところが,森の中には,下の写真のように,きれいに半分に割れたオニグルミの殻が落ちていることがあります.いったい誰の仕業でしょう.

リスの食痕

体色変化

 沖縄から届いた写真にコブシメの体色変化がありました.ヒラメやカレイの体色変化,カメレオンやグリーンアノールの体色変化と同様に,コブシメも様々に体色を変えることができます.体色変化の研究には,色を変えるメカニズムの研究と,色を変えられることによる適応的意義の研究の両方があります.「視覚から入った信号を...」とか,「体表の細胞内の色素が...」とかは前者の,「カムフラージュによって生存率が...」とか,「配偶行動時に体色が黒いと...」とかは後者の研究に属します.どちらも興味深いのですが,視点が異なることに注意しましょう.

コブシメ

一緒に棲む

 沖縄から届いた海水魚の続きです.朝日に映えるタイワンカマスの群れ(写真上)と一緒に棲むヒメダテハゼとモンツキテッポウエビ(写真下)の写真です.動物の個体どうしの関係にはいろいろあります.タイワンカマスは同種の群れを作っていますが,群れを作るとどういう利点があるのでしょうか.ヒメダテハゼはモンツキテッポウエビという別の動物と2匹で一緒に暮らしていますが,そこにはどんな利点があるのでしょうか.信じられないくらい多様な形態の生物がいるように,個体どうしの相互関係も複雑怪奇です.未記載種(新種)を見つけるのと同じくらい(それ以上に),誰も知らないような個体の相互関係を見つけるとわくわくしますね.
タイワンカマス

ヒメダテハゼ

人の顔のような魚

 沖縄から海水魚の写真が届きました.コメントが付いていて,男の人の顔のように見えるヤエヤマギンポ(上の写真)と擬態上手でいっこうに逃げないからついつい見入ってしまうカミソリウオ(下の写真)だということです.実際に見て調べてみたり,逆に調べてから実際に探してみたりすることは,生態学では肝心なことですね.
ヤエヤマギンポ

カミソリウオ

タイ北部から

 先週,タイ北部へ野外調査に出かけていた知人に,写真を見せてもらいました.タイ北部のドイ・チェンダオ付近で哺乳類の調査を行ってきたそうです.この山(ドイは山の意味)はタイで3番目に高いということです.昆虫の写真もいくつかあって,尾状突起の長いきれいなシジミチョウも写っていました.この長い尾状突起は,偽の頭として機能しているという説があります(擬態の一つ).鳥などの天敵は,餌となる昆虫の頭部をついばむと捕食の成功率があがるはずです.もしこのシジミチョウを鳥が襲うとすると,尾状突起が触角に,その基部にある黒い斑紋が目に見えるため,そこをついばむでしょう.しかし,そこは翅の一部であって,蝶は逃げられるというわけです.実際に尾状突起が欠けた蝶が多いのは,天敵からの捕食をそうして免れた個体が多い事を示しています.トカゲの尾切りと似ていますね.
ドイチェンダオ

タイ蝶

北海道で学会

 11月2〜3日に,北海道の札幌で日本爬虫両棲類学会第52回大会が開催され,動物生態学研究室から3名の学生が参加して,研究発表を行ってきました.北海道は食べるものがおいしくて,学会以上に食を満喫してきたようです.チョコレートのお菓子,カニみそ,鮭の薫製などのお土産もたくさん買ってきてくれて,しばらく北海道気分が味わえそうです.

爬虫両生類学会

催し物多し

 秋と言えば大学祭のシーズンです.首都大学東京では,大学祭のときにオープンラボも開催されます.明日(11月3日,日曜日)には,動物生態学研究室でも「身近な自然の動物たち」という展示を行います.
 大学祭終了の翌日(11月6日,水曜日)の午後には,首都大学東京のFDセミナーが開かれます.FDとは,大学による授業改善の取り組みのことです.そのセミナーで,知識伝達型の授業におけるアクティブ・ラーニングの実践についての事例報告(生態学の授業について)が少しだけ含まれています.
 その直後(11月8日,金曜日)には,毎年恒例の「バイオコンファレンス2013」という講演会が,生命科学専攻主催で開かれます.講演会のあと,生命科学専攻の各研究室や関連機関の学生によるポスター発表会があります.生命科学はとても細分化・専門化されていますが,こうして一堂に会することによって見聞を広げようというものです.
ポスター

研究室ブログ2年目に

 首都大学東京 生命科学専攻 動物生態学研究室の研究成果や日常を綴るこのブログが2年目に入りました.ちょうど1年前の11月から毎月少なくとも10回以上は新しい情報を伝えるように心がけてきました.2年目の第1段として,沖縄から最近届いた海の風景をあげておきます.イソバナとノコギリダイの群れの様子です.さすがに沖縄,この時期でも海に潜って海中散歩が楽しめるのですね(もっともスキューバーダイビングで撮影したということですが).
イソバナ
プロフィール

首都大動物生態

Author:首都大動物生態
研究室の日常の紹介
研究室HP
研究室HP in English

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR