FC2ブログ

源氏蛍(4)

 ホタルの仲間には,オスが大きな内部生殖器をもつ種と,小さな内部生殖器しかもたない種の両方がいることがわかりました.両者で形態や生活史を比較すると,興味深い傾向があることに気づきます.
 オスの内部生殖器が小さい種では,メスの翅が退化したり,幼形成熟することによって,オスの体の大きさに比べてメスの体の大きさがとても大きくなっています(写真はイリオモテボタル,黒いのがオス,白いのがメス).それに対し,オスの内部生殖器が大きい種では,雌雄とも普通のホタルの形をしており,メスの体の大きさはオスと同じか少し大きい程度です.
 雌雄の体の大きさが同じくらいであれば,メスにとってオスと交尾するときに得られる栄養量はかなり重要です.しかし,メスが大型化した種では,小さなオスから得られる栄養量はそれほど重要ではありません.これらの種では,メス自ら翅など余分な場所に栄養を回すのをやめて卵巣を含む腹部を大きくしているのですから.一方,オスは,内部生殖器を発達させて維持することに大きなコストをかけます.その価値が低いのであれば,コスト削減のため内部生殖器は必要最低限な大きさにおさえられるでしょう.(つづく)

イリオモテボタル
スポンサーサイト



源氏蛍(3)

 ゲンジボタルのオスの内部生殖器は大きく,付属腺がよく発達しています.この付属腺には精包の前駆体が形成されており,交尾のときにメスの体内に精包という精子の入った容器を形成します.精子以外の大部分はメスの体内で消化されてしまうため,メスはそれを栄養として使っている可能性があります.成虫になってから水を飲む程度のメスにとって,オス由来の栄養(とくにタンパク質)の貢献度は高いと考えられます.
 ところが,いろいろなホタル類のオスの内部生殖器を調べてみると,とても小さくて,精包の前駆体を含んでいない種も多いことが明らかになりました(この論文).ホタル類の分子系統樹上に,オスの内部生殖器が大きいか,小さいかを並べてみると,ホタル類では,オスは本来大きな内部生殖器をもっていたのに,進化の途中で少なくとも2回,内部生殖器が小さく退化(?)してしまったグループが出現したことが読み取れました(下図).これらのグループでは,どうしてオスの内部生殖器が小さくなってしまったのでしょうか.(つづく)
ホタル精包系統

源氏蛍(2)

 ゲンジボタルが暗闇で光りながら飛翔する光景は,日本の梅雨時の風物詩として定着しています.このゲンジボタルのオスの内部生殖器を観察すると,精子を作る精巣,作った精子を移動させる輸精管(vd),運ばれて来た精子を貯蔵しておく貯精嚢,いろいろな液体や物質を合成して貯めておく付属腺(ag)が認められます.若い成虫ではその周りに脂肪体(fat)が付着しています.交尾の時,オスは,貯精嚢の精子と付属腺の物質を押し出し,交尾器を介してそれらをメスの体内に移送します.ゲンジボタルのオスの付属腺は,3対もあり,とくに1対目(ag1)と2対目(ag2)が大きくなっています.2対目の付属腺の中には,精包の前駆体が含まれています.これによって,交尾後に,メスの体内で精包と呼ばれるペットボトルのようなものが形成されます.精包の先端部(ペットボトルの口の部分)から精子が出て,メスの体内の精子を貯える袋に貯えられます.メスは,産卵時に,ここに貯えられた精子で卵を受精させて産みつけます.精子以外の付属腺物質や精包自体は,メスの体内で次第に消失してしまいます(消化吸収).ここで,それが,メスの栄養になっているのではないかと考えられるわけです.(つづく)

蛍付属腺

源氏蛍(1)

 昨日は久しぶりに晴れ,夜に八王子の西の山に蛍を見に行きました.日暮れ前に到着し,だんだんと暗くなっていく中で,一つ,二つと光り始め,けっこうな数のゲンジボタルが舞うのを見ることができました.この辺では,ちょうど出現の初期らしく,どれも新鮮な個体でした.ゲンジボタルは比較的大型の蛍で,オスの光はかなり明るく,見ていて本当に幻想的です.そのため,ゲンジボタルの発光パターンや配偶行動については多くの研究がなされています.しかし,ゲンジボタルのオスが,交尾のときにメスに栄養を渡す現象はあまり知られていないのではないでしょうか.(つづく)
ゲンジホタル

梅雨と海

 今年は,梅雨入りといわれてしばらく好天が続いていましたが,季節外れの台風の接近もあって,ここのところ関東でも本格的に梅雨の気配です.湿度が高いのと,低いのでは,人はやはり後者の方が快適に感じ,雨が降ると活動も鈍りがちです.今日,沖縄から,海水魚の写真が何枚か届きました.大学生になって,初めて水中カメラで撮影したという写真です.沖縄の海での感動が,こうして記録に残せ,瞬時にみんなで共有できるとは,つくづく便利な時代になったものだと感じます.フィルムカメラで何枚も撮影して,写真屋で現像して焼き付けてもらい,会心の一枚を選んでは,ささやかながら自分自身のアルバムを作るのが楽しみであった時代を知っているだけに,その便利さには本当に驚くばかりです.
沖縄海水魚

蛇蜻蛉

 前に,ラクダムシの名前の由来について紹介しました(ここ).成虫を横から見たときのシルエットが,駱駝(ラクダ)に似ていることから,ドイツ語でそう呼ばれていたためです.しかし,英語では,ラクダムシ類をsnakeflyと呼びます.これを日本語に訳すと,ヘビムシとなりそうです.日本にはヘビトンボと呼ばれる別の仲間の昆虫が生息しています.「ヘビ」という言葉がすでにこの仲間の昆虫に使われていたので,ラクダムシの方に英語のsnakeflyの訳を使わなかったのだと思われます(和名を過去にさかのぼって追跡したわけではないのであくまで想像ですが).
 それでは,ヘビトンボ類はどうしてこの名前で呼ばれるようになったのでしょうか.ヨーロッパには,ラクダムシ類は普通に生息していますが,ヘビトンボ類は分布していません.ヘビトンボ類の英語標記は,dobsonfly(ヘビトンボ亜科)とfishfly(クロスジヘビトンボ亜科)が使われています.実は,ヘビトンボの名前の由来は定かではありません.幼虫が細長くて,触ると咬まれて痛いので,そこから蛇を連想するという意見もあれば,成虫が,触ろうとすると蛇が鎌首をもたげるような態勢をとって威嚇し(下の写真),実際に咬みつかれると出血することさえあるので,そう呼ばれるという意見もあります.もちろん,トンボのほうは,成虫が蜻蛉に似ているからでしょう.

鎌首

ミニシンポ

 アリゾナ大学から来日中の学生を交えて,英語でミニシンポジウムを開くことになりました.大学院生が自主的に国際交流をはかる場を作るという大学院授業の一環として開催されます.アリゾナと東京の自然や動植物をスライドを使ってお互いに紹介するという企画です.こうした企画を立て,実際に行ってこそ英会話の実力がつくというものです.良い勉強の機会になればと思います.
ミニシンポ

カラフルなリス

 タイでフィンレイソンリスという樹上棲のリスを調べている共同研究者に,そのリスの写真をいただきました.中国大陸から東南アジアにかけて,Callosciurusという属のリス類が分布していますが,この仲間のリス類は,昼行性で,艶やかな色彩をもつ種が多く含まれています.哺乳類の体色は,分類を行う上で重要な形質ですが,同種といえども個体ごとに色彩や模様が違うことがよくあり,注意が必要です.フィンレイソンリスもこのCallosciurus属の一種で,同種内で様々な体色の個体がいます(下の写真).また,地域ごとにも差異があります.哺乳類の体色の適応性に関する研究材料として興味深く,その謎解きには胸躍る楽しみがありますね.
白
赤
黒

メスの顔が左右非対称

 5月下旬に九州へ野外調査に行って来た大学院生が,一頭だけですがニホンホホビロコメツキモドキを採ってきました.この昆虫は西日本,とくに四国や九州ではよく見られます.この個体はメスで,頭部が左右非対称です(下の写真).オスは左右対称の顔をしているのに,メスだけ左右非対称なのはどうしてでしょうか.メスはメダケの竹筒の中に産卵します.このとき,堅い竹を削らなくてはなりません.そこで,メスは,吸盤の良く発達した前脚,中脚でふんばって,大顎で削るのです.このとき,左側の大顎を大きく頑丈にして,これで缶切りのように切り開いていきます.大きな左側の大顎を動かすためには大きな筋肉の束が必要となり,それを収納するために左側の頬が膨らんでいるというわけです.一方,オスは竹を削る必要がないため,大顎は左右とも小さく,左右対称のままです.
ニホンホホビロコメツキ

短期研究留学生

 以前のブログで紹介しましたが(ここに紹介),6月から約3ヶ月間,アリゾナ大学のコプロウスキー博士の研究室(野生動物の生態、保全)の学生2名が,動物生態学研究室に滞在して研究を行います.アリゾナ大学の研究奨学金(the BRAVO! (Biomedical Research Abroad: Vistas Open!) program at the University of Arizona)に採用されて,こちらで小哺乳類の採食行動の観察と分析を行ないます.予定通り,無事到着し,今日からさっそく野外調査を開始しました.チョコレート,リスの置物,Tシャツのお土産もいただきました.研究成果があがるだけでなく,日本のいろいろなことを経験してほしいと思っています.また,研究室や生命科学の学部学生・大学院生には,生きた英会話を学ぶ絶好の機会です.

アリゾナ
プロフィール

首都大動物生態

Author:首都大動物生態
研究室の日常の紹介
研究室HP
研究室HP in English

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR