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オニグルミの幼木

 オニグルミの種子は,ニホンリスによって遠くへ運ばれて,そこで発芽することがあります(ここ).一般的に,母樹の近くには,その植物の実を食べる哺乳類や昆虫類が集まっていて,その植物に寄生する微生物や菌類もたくさんいます.そのため,母樹の近くの種子や稚樹は,生存率が低く,母樹から遠く離れた場所ほど生存率が高くなります.
 オニグルミの場合もそうでした.オニグルミの木がまとまってはえているところから,0 m,10 m,20 m,40 m,60 m,80 m離して,リスが貯食するのと同じように,種子を地表に埋めた結果,近くではすぐになくなってしまうのに,40 m以上離れるとほとんどなくならないことが確認できました(この論文).種子から発芽した稚樹に関しても,母樹の近くではほとんど生き残らないのに,遠くではあちらこちらに幼木として残っています(ここ).つまり,オニグルミの母樹は,リスの貯食行動を利用して,自分の子を分散させて,生存率をあげていると考えられます.(つづく)

中国四川省で見たクルミの幼木(人の背丈より低いのに実をつけていました.すでに成木かも知れません?)
中国クルミ

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リスとクルミの関係

 ニホンリスは,オニグルミの実が大好きです.それだけを見ると,オニグルミの実は,一方的にリスに食べられるという関係しか思いつきませんね.前に紹介したように(ここ),ニホンリスはオニグルミの実をよく貯食します.貯食されたクルミの実は,その後どうなるのでしょうか.しかし,森の中で,リスがクルミの実をどこに隠したのか,見つかるはずがありません.
 それでは,オニグルミの実に,小型発信器をとりつけるとどうでしょう.電波をたよりに隠した場所が探し出せます.探し出した後も,そのままにしておけば,その後のクルミの実の運命も調べられます.秋,森の中に餌台を設置して,発信器付きのオニグルミの実を春まで追跡した結果,貯食された実は必ずしも食べられてしまうわけではなく,いくつかは発芽することがわかりました(この本の中).つまり,リスはクルミの種子散布に貢献しているのです.リスが貯食しなければ,クルミは遠くまで種子を散布できません.(つづく)

リス貯食

リスとクルミ

 日本には,昼行性の樹上棲リス類として,北海道にキタリスが,本州,四国にニホンリスが生息しています.これらのリスたちは種子をよく食べますが,とくにオニグルミの実が大好きです.オニグルミの木の近くで,ニホンリスがクルミの実を食べている様子は,豊かな自然の象徴として,最もふさわしいものの一つでしょう(下の写真).
 このリス,オニグルミの実を見つけると,その場で食べてしまうこともありますが,よく貯食をします.クルミの実を1個ずつくわえて遠くまで運んでいって,地表とか木の枝の隙間とかに隠すのです.いったん隠しておいて,後で,それを掘り起こして食べようというわけです.ニホンリスのこの貯食行動は,自然の中で,いったいどのような影響を及ぼすのでしょうか.ニホンリスがクルミの実を貯食する場合と,しない場合で,周りの生物の相互関係にどのような違いが生じるか,想像してみてください.生物の相互作用に気づくことから生態学の研究はスタートします.(つづく)

ニホンリス

カエルと高校生

 高校教育において,理数系を重視したカリキュラムや科学クラブなどの活動を推進し,科学技術系人材の育成を目的として,文部科学省は,スーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業を実施しています.SSHの指定校に選ばれると,5年間ほど特別な予算がついて,高校生の理数系の授業や研究に力を注げるというわけです.
 今日は,そうした高校の生徒と先生と一緒に,DNAに基づくカエル類の種の同定を行なう手法の開発を行ないました.卵塊から尾芽胚くらいの発生段階のサンプルを一つとり,そのDNAの制限酵素断片から電気泳動で種を判別しようというもくろみです.電気泳動を行なったあと,寒天ゲル上に,種によって違うDNAバンドが出て,大成功でした.

ヤマアカガエル

水生から陸生へ(その3)

 ある動物のグループ内で,形態,行動,生活史などが,種ごとにどのように変化してきたのかを知るためには,系統樹を作る必要があります.様々な形態形質を比べながら,これとこれは近縁で,これとこれは疎遠で,と想像しながら系統樹を描くことができます.しかし,どちらが祖先的形質で,どちらが後で出現した形質なのか,そう簡単には確定できません.そこで,最近では,DNAの塩基配列に基づく系統樹の推定が行なわれるようになってきました.
 これまで2回に分けて紹介してきたホタルトビケラ類に関しても(ここここ),DNAの塩基配列に基づく系統樹が推定されました(この論文).その結果,幼虫休眠を陸上で行なうようになったのは,下の図の赤印の部分で1回だけ生じ,そのグループの中で,完全な陸生種であるヤマトビイロトビケラが最近になって出現したと考えられまた(下の図の緑印).また,幼虫の筒巣の材料については,図中の青印のところで,植物から砂へ変化したようです.同じく,そこでメスの成虫の翅の退化が生じています.技術の進歩によって,疑問に答えられる範囲は,確実に広がっていますね.

ホタルトビケラ系統樹

もちつき

 毎年,12月も半ばを過ぎると,生命科学専攻の大学院生と教職員共催の「もちつき大会」が開かれます.もちろん,学部の学生も自由に参加できます.今日はその「もちつき大会」の日でした.圃場の一画に大勢が集まりました.
 倉庫から用具を一式持ち出して,もち米をふかすところから始める本格的なもちつきです(準備担当の学生,教職員のかたに感謝).つきたてのもちの味は格別です.あんこ,きな粉,大根おろし,キムチで食べて,さらに豚汁の中に入れて雑煮にもしました.初めてもちつきの様子を知る学生も多いのではないでしょうか.

もちつき

ゼミの後

 毎週火曜日の夕方(午後4時20分から午後6時まで)には,動物生態学研究室のゼミがあります.学生と教員が毎回一人ずつ担当して,論文紹介や自分の調査研究のまとめなどを発表します.充分に時間があるので,研究の詳細まで話し,それをみんなで深く議論できるところがこのゼミの特徴です,しかし,しっかりと準備をしないと,時間が余ってしまいます.
 このゼミの後は,研究室にある大きめのテーブルに集まって,わいわい,がやがやと談笑するのが大昔からの慣例です.昨日は,男子学生が水炊きを作って,ビールやワインを片手に,日常の話やら,研究の話やらで楽しく過ごしました.先月に,ソウル市立大学から来ていた学生が,おみやげに置いていった韓国の果実酒も開けて飲みました.メキシコのテキーラとか,中国の蛇酒とか,かわったものを試しに飲んだり,食べたりするのも,このゼミの後の楽しみになっています.

韓国酒

水生から陸生へ(その2)

 ホタルトビケラ類では,水生から陸生への生活史の進化があることを紹介しましたが,他にもいくつか違いが認められます.ホタルトビケラ類の幼虫は,筒巣を作ってその中に隠れて暮らしています.その材料が種ごとに違うのです.AからCの3種では,砂つぶを集めて巣を作ります.しかしDからGの4種では,植物質の巣を作ります(下の写真).また,AからCの3種のメスでは,成虫の翅が退化するのに,DからGの4種では,成虫の翅はけっして退化しません.
 幼虫の筒巣の材料は,砂から植物へと変化したのでしょうか,あるいは植物から砂へと変化したのでしょうか.この変化は,ホタルトビケラ類の種分化につれて,1回だけしか起こらなかったのでしょうか.ひょっとして,砂から植物へ,植物から砂へ,何回も繰り返して起こったかも知れません.メスの成虫の翅の退化もそれぞれの種ごとに独立して起こった可能性があります.こうした疑問を解決する方法はあるのでしょうか.(つづく)

ホタルトビケラ巣

水生から陸生へ

 あまりなじみがない昆虫かも知れませんが,日本には,ホタルトビケラ属(Nothopsyche)が7種分布しています.ホタルトビケラ類は,いわゆるトビケラ(毛翅目)の仲間で,日本以外では,北ベトナムなどに記録がある程度です.この虫,下の写真をよく見て下さい(Aホタルトビケラ,Bババホタルトビケラ,Cヤマトビイロトビケラ,Dヤマガタトビイロトビケラ,Eヒメトビイロトビケラ,Fウルマートビイロトビケラ,Gトビイロトビケラ).みんな,色や模様がそっくりですね.大きさは少し種間で差があります(写真のスケールはほぼ同じ).
 成虫の形態はどれもよく似ていますが,生態は多様です.トビケラ類は水生昆虫なので,幼虫は水中で暮らしています.終令幼虫は,蛹化する前に夏眠します(夏の間の休眠).このとき,AからDの4種では,水面より高いところに固着して休眠するのが常です(このとき陸生).しかも,Cのヤマトビイロトビケラは,生涯,水中ではなく林床で暮らします(完全に陸生).本来,水生であったはずのトビケラ類が,一時的に陸生となり,さらに完全に全ステージが陸生になったに違いありません.この一連の進化過程を証明するには,どうすればよいでしょうか.(つづく)

ホタルトビケラ成虫

生涯学習

 大学などの教育機関では,来年度開講される講義の時間割やシラバス作りに忙しい時期になってきました.同一教員の講義や実習が,ダブルブッキングされないよう,細心の注意を払わなくてはなりません.
 一方,各地方団体や民間主催のシンポジウムや市民講座も数多く開講されています.それらの来年度の予定も,今,着々と進められているようです.稲城市では,プロフェッサー講座(有料,定員50名)として,来年4月から9月にかけて,毎月1回づつ(計6回)の「東洋のガラパゴス!世界遺産”小笠原”の自然」が開講されることになりました.このうち,5回目と6回目に,小笠原諸島の動物の分子系統地理学的研究の紹介をすることになりました.一般の人にもわかってもらえて,かつ興味をもってもらえるような内容にしたいと思っています.

市民講座

マレーシアから

 今日は,マレーシアのカワトンボ類2種の標本を見ました(下の写真).標本で見るときれいでよく目立つのですが,実際に渓流のそばで見かけると,背景にまぎれて見失ってしまうことがあります.
 トンボ類は昼行性で,大きな複眼をもっていて,視覚で相手を認識します.オスどうしだと争ったり,メスだと求愛飛行をしたり,見ていても飽きません.
Vestalis
Echo

落書き

 生物学の実習では,生物の外形や内部構造のスケッチをすることが多いですね.物を見て,線で描くためには,その線がどこからどこまで続いていて,どちらの線が上側(外側)にあるのかをよく見極めないといけません.つまり,物を良く見なくては描けないのです.よく見ることによって,理解が深まり,さらに思わぬ発見につながることがあります.
 生態や行動を知っていると,生物のスケッチに躍動感を与えることができます.中学生や高校生の落書きにさえ,躍動感があって驚くことがあります.形だけでなく動きをよく見ることも大切ですね.

きな

八王子セミナーハウス

 8日,9日は,生命科学コース2年生が企画する,毎年恒例の合宿セミナーでした.今年は,1,2年生向けに教員が研究室の紹介を行い,みんなの質問に答えて親睦を深めるという会になりました.会場は,これも毎年恒例の八王子セミナーハウスです.首都大学東京からバスで20分くらいの山間にあります.
 八王子セミナーハウスには,ちょっと変わった建物があって(写真),そこがテレビドラマなどでよく使われるのだそうです.古いところでは,「ウルトラマン」の科学特捜隊本部の基地として,最近では,「悪夢ちゃん」に登場する夢博士の帝都工科大学人間科学研究所として,テレビに放映されました.

セミナーハウス

画眉鳥

 首都大学東京のキャンパスには,わりと大きな緑地が自然のまま残っています.ここには,いろいろな野生動物が棲んでいます.野外実習や野外実験も,この緑地内で行なわれることがあります.
 外来種もいて,その一種であるガビチョウ(画眉鳥)は,いろいろな声でよく鳴いていて,夕方の講義では,思わず学生に,その由来や一般的な習性の説明をしてしまうことさえあります.そう言えば,北ベトナムの最北の地(中国との国境近く)では,山あいの家の軒先に,竹籠で飼われているガビチョウがたくさんいました.もともと,姿だけでなく,鳴き声を楽しむために飼われるようになったのでしょう.

ガビチョウ

昼と夜

 かつて,図書館には,世界中から集めた学術雑誌(論文が掲載されているジャーナル)が並んでいて,そこから必要な論文を一つ一つ探し出してコピーをとっていました.しかし,今や,パソコンで検索をして,画面上で論文を開いて読むという時代です.「図書館にこもる」というわくわく感はすっかりなくなってしまいました.
 首都大学東京の図書館も,時代の波におされて多目的化が進んでいます.東京都内に在住・在勤の人も簡単な手続きを行なえば利用可能なのは当初から変わっていませんが,首都大学東京機関リポジトリ「みやこ鳥」による学術情報公開,首都大学東京図書館主催の講演会(装丁家、カリスマブロガー、翻訳家などによる講演)や展示会(古文書などの展示)が行なわれ,コミュニケーションスペース(学習の相談に応じてくれるスタディ・アシスタントが常駐)や四方ガラス張りのプレゼンテーションルーム(少人数のゼミや講演会が可能)が設置されています.
 帰り際,少し背を丸めて急ぎ足でも,ライトアップされた図書館にいつも目がいってしまいます.

図書館

鬼に金棒

 この夏,中学3年生に,アメンボ(=ナミアメンボ)とオオアメンボの雌雄の形態の比較をすると面白いよ,とすすめたら.さっそく,緑色のバケツにいっぱい,2種のアメンボを採ってきて(下の写真),ものさしで脚や体の長さを測定して,グラフを作っていました(幼虫と成虫,オスとメスの区別の仕方は教えてあげました).計測を終えると,全部,捕まえた場所に放してきたそうです.
 ところで,
(1) アメンボとオオアメンボの形や色を思い描けますか(同定できますか)?
(2) アメンボとオオアメンボが生息している環境を知っていますか(その場所に行って採集できますか)?
(3) アメンボとオオアメンボでは,それぞれ雌雄にどのような形態的違いがあるか想像できますか(性的二型は)?
(4) アメンボと同じ傾向をもつ他の昆虫(動物),オオアメンボと同じ傾向をもつ他の昆虫(動物)をそれぞれ2種以上挙げられますか(進化のしくみは)?
 1と2がわかる人は,本当に生物(昆虫)が好きな人で,野外観察の経験が豊富だと思います.3と4がわかる人は,生物(昆虫)に興味をもって勉強(本を読んだり)していて,推理力も相当ありますね.全部わかる人は鬼に金棒,生物の世界がおもしろくてたまらないでしょう.

アメンボ

林大顎蛇蜻蛉

 新種に自分の名前が付くといえば,もう一つ例があります.
 こちらは,遠くベネズエラから発見されたオオアゴヘビトンボ類の1種に名前が付けられました(ここの論文).ベネズエラ産ですが,あえて日本語で呼ぶとすると,林大顎蛇蜻蛉でしょうか(珍奇さがあふれていて,もちろん気にいっています).下の写真は,北アメリカ産のオオアゴヘビトンボの雌雄です.オスでは,大顎がクワガタムシのように伸びるという特徴がありますが,この仲間の1種として新種記載されたものです.いつか,ベネズエラへ出かけて行って,その生態を自身でぜひ明らかにしたいと思っています.

アメリカオオアゴヘビトンボ

林怒り恙虫?

 先日,ハヤシイカリツツガムシ(下の写真)という新属新種のダニが記載されました(Takahashi M. et al. 2012. A new genus and two new species of chigger mites (Acari, Trombiculidae) collected from amphibious sea snakes of Japan. Bulletin of the National Museum of Nature and Science Series A, 38: 159-172).
 ササラダニ類のヤマサキオニダニ(山崎鬼ダニ)の逸話は有名ですが,自分にも同じことが起こって,こんなに楽しいことはありません.「林怒り恙虫」と,当然のようにみんなが思うでしょうが,本当は「林錨恙虫」なのです.胴体の毛の形が船の錨(いかり)に似ているところからイカリツツガムシ属と名付けられました.
 ずいぶん前に,沖縄のウミヘビ類に寄生するダニ類の生態調査を行ったことがあります.この時,ツツガムシと呼ばれるダニ類が3種寄生していたので,sp. t,sp. b,sp. wと記号で区別して,それぞれの生態を報告しました(ここ,2.2Mbのpdfファイル).今回,sp. tがハヤシイカリツツガムシ,sp. bが共著者のもう一人の名前をとってマスナガタマツツガムシとして,新種記載されたというわけです.

ハヤシイカリツツガムシ
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都立大動物生態

Author:都立大動物生態
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